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ヘタレ漫画描きサンマのブログです。
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今日はSSなど書いてみようかと思います。なんとなく。つれづれと。




 一週間前は、神殿の仕事でひたすらにチョコレートを作っていた。
 手を口元に持ってきて、息を吐き、吸う。一週間も前のことであるのに、まだ甘ったるい残り香があるように感じられた。
 かつてこの手は、とても醜かった。てのひら、手の甲、指先に残る傷跡が、幼い頃の記憶を蘇らせる。その傷を隠すため、常に皮の手袋をしていた。心的外傷というよりは、非力であったがゆえに己の手を傷つけられた過去を恥じたからというのが大きい。
 相棒たちが協力してくれたのもあり、その傷が治癒されたのが、去年の話だ。白く柔らかい己の手に、最初は戸惑い、だんだんと慣れていった。一度消え去ったタコも、二度三度と獲物を振るうたび元通りになった。
 この手には、いつも鉄の匂いが染み付いていて、武器を扱うがゆえにタコも多かった。
 しかし、この手が幼い頃の傷を失う前から、守らねばならない関係が出来ていた。

 帰る家があり、帰りを待つ家族がいる。
 たとえ世間一般で語られるものと違うかたちでも、それがあることで責任というものが生じる。
 死んではならない。
 それは、武器を振るい戦場を駆けていては保障出来ない事だった。
 不覚を取り、一度倒れ、その後も雪山で死にかけた。
 愛用のハルバードは雪崩の中に消え、おそらく今はどこか山奥で錆付いているだろう。
 死を免れたとはいえ、決定的な敗北だった。
 神殿職に専念し、戦場から遠ざかったのは、それがきっかけだ。

 思えば、随分とてのひらの皮も薄くなった。
 鍛錬は欠かさぬようにしているが、所詮は血が流れることもないただの素振りだ。いずれはこの精神も、戦場の空気に耐えられなくなるだろう。
 そうなる前に、武器を取り戦場へ戻らねば。そういう焦りもある。
 だが自分が死に、蘇ることもかなわなかった時、家に残した者達がどういう顔をするか。一度体験しただけに、それへの恐怖も大きい。

 もう一度、息を吸う。
 甘ったるい香りは、己の不安を消し去ってはくれなかった。
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